出会い
いろんな人間がいるよ
まきママは「あたしゃ昔から金には興味がないんだよ」と言う。
あたしは「ママは先月いくら売り上げたの?」とか聞く。
ママは幾らだよって即答して、あたしは「アタシって幾ら売り上げたらいいわけ?よくわかんないんだけど?」って言う。
「みーちゃんは幾らだったんだい?」って聞かれるから「幾らだよ」って言うと
「いいんじゃないかい?あたしゃ金には興味がないんだよ。ボケ防止で店開けてるんだしね。みーちゃんくらいの時は飲み過ぎて年中カウンターでひっくり返ってたよ。」
「ふつうにあたしじゃん」
先日、まきママがうちのお店に来てくれた。
365日ほとんど無休の店を閉めてお客さんを連れてきてくれた。
みんなそんな時に限って人のウワサ話しや、下品にあたしや料理をいじって何時になくイヤなムードになりかけた時、
ママは不意にあたしに話しを振ってきた。
みーちゃんは富山の風の盆は知ってるかい?
残暑が残ってる季節に日が暮れていい風が吹いて来る時間になると
ちゃんと色気のある浴衣の着方した女の者たちがしなしな踊りながら流してきてねー
旅館の二階あたりからアタシも浴衣来て流しを眺めるのさー。
情緒があっていいねえ。あたしゃ楽しくなってしまって、階段降りて下駄履いてさぁずーっと流しの後を歩いて行ったよ。
なんだか柴又の寅さんが旅の風景を話してるみたいに情景が浮かんで、
ママは本物の色気を持っている女だと思った。
時々ごくたまに叱られるって言うか、あんたアレはこうしたらダメだよって注意される。
あたしは彼女には問答無用に「わかりました。気をつけます」って言う。
ママが元気なうちに、いやいやたった今から悪いとこを治して見せて「治したよ!」って言いたくなる。
出会いは必然なのかな?