オリオンビールの島から



夏の甲子園がはじまると空気が変わる街

試合がはじまり 道路も繁華街からも一斉に人が消える島

みんな自宅か定食屋か ともかくTVが見れる場所に座り込む

タクシーも止まってラジオをつけてる

路線バスは待っても来ない

人が消えた街中にいるのは犬たち

飼い主のいない犬はあちこち自由気ままに暮らしているから

急に消えたいつも肉に切れ端をくれる優しいオバアがいない事に首をかしげる

そんな島だった


来月 あたしらの島 佐渡の羽茂のお祭りに


あの島で出会った うちなんちゅー(沖縄の人)のSが6月にやってくる

ないちゃー(沖縄以外の日本人)のあたし達に会いにくる



名護の海岸線 「許田」は雨の通り道

いきなり雨が右から左へ走り通る場所

緑色の海にかけて 虹が現れては消える

辺野古から許田を通って彼女はいつもバイクを走らせ

その虹をくぐって 400CCのバイクでずぶ濡れになってる


彼女の勤務先のスナックに現れ 「ずぶ濡れの豚に一杯おごってよ〜」


彼女が店に入ってくると 暗いその店に陽がさす



ある日 あたしはインフルエンザにかかった

病院で検査をすると「A型ですね 新型かもだね」といわれた


40度を超える高熱にあえいでいると

彼女も同時期に高熱がでたと

「あたしも熱が下がらないさ 下げに行こうね」と電話があった


あたしらはまた許田のスコールをくぐって海岸へ出た


服を脱いで

珊瑚がくだけて出来た真っ白な砂浜を歩いて
エメラルドグリーンの海へ入っていった

そして浮いたり沈んだりしながら地球に自分をまかせてみた

死ぬも生きるも地球次第だなあ・・・


「気持ちいいね〜?」
「いいね〜海が一番上等さぁ〜」
「見て!魚が足の周りにいる!」


「熱下がったかなあ?」
「だいぶ下がったきがする」
「楽になったね」
「楽なったぁ」


うちなんちゅーのやり方であたしのインフルエンザは去っていった


「友あり 遠方より来たる」 いい言葉だなと夫が言った


佐渡汽船に乗ってやってくるのかあいつ ふふふふ


うれしいさ!上等だ!