映画 5



キャスト
阪東妻三郎(富島松五郎)
月形龍之介(結城重蔵)
永田靖(吉岡小太郎)
園井恵子(夫人良子)
川村禾門(吉岡敏雄)
沢村アキヲ(現・長門裕之。敏雄の幼年時代


この映画が好きなんだ というのはめったに口にしないです
だいたい笑われるから恥ずかしいから話題にしたくない


松五郎が想いを寄せる吉岡の妻 良子役の
園井 恵子(そのい けいこ、1913年8月6日 - 1945年8月21日)は
宝塚歌劇団スター そして広島原爆被爆者(犠牲者)である

園井恵子 - Wikipedia



この美しい人の最後がどうであったかを記録した文章があったので貼っておきます



宝塚出身で新劇「苦楽座」にはいった女優園井恵子は、昭和18年大映映画『無法松の一生』で阪妻の相手役吉岡夫人として起用され、その凛として優雅な姿は観客をうならせた。
 大映はただちに専属契約の話を持ち出したが、園井は「折角ですが、私はまだ当分、苦楽座の人たちと舞台の修行をいたしたいと存じますから」とことわった。苦楽座同人の徳川夢声は書く。「この時、彼女がもし、大映の専属となり、苦楽座から去っていたなら、広島の原爆死はなかったのだ。何を好んで彼女は、ロクに給料も貰えない苦楽座なんかに囓りついていたのであろうか?」
 劇作家八田元夫は、彼女のことを「美しい、きまじめな、心がけのよい女優」と書く。
 夢声はまた、舞台での園井について記す。「舞台の上で、彼女が息をはずませて相手役である私にすがりついてくる時など、一瞬ではあるが、彼女はほんとに私を恋しているのではないかと錯覚が起るほどだった」
 一方、東宝の映画監督山本嘉次郎も『無法松』を見て、「その繊細巧緻な芸風と、清楚でそのくせ、どことなく漂うほのぼのとした色気」に感嘆し、自分の次回作の主演女優を園井恵子にしたいと考えて、彼女のために脚本を書き、その行方を探し求めたが、彼女がすでに移動演劇に属して地方に出ていたため、なかなか所在がわからなかった。ところがある日、東宝撮影所にゆくと、いま園井恵子が来て、映画の仕事を求め、2、3分前に出ていったという話であった。山本はすぐに追ったが、またも彼女の行方は逃げ水のごとくとらえることが出来なかった。
 このことを「夏の、ベラボーに暑い日」と、山本は記している。『無法松』の封切は10月であったから、それは翌昭和19年のことであったろうか。
 死神は、ここでも彼女を離さなかったのである。
 園井恵子は、苦楽座の移動劇団、俳優丸山定夫のひきいる「桜隊」の一員として、昭和20年6月末に広島に来て、そこを中心に中国山陰各地を巡演し、たまたま広島に戻っていた8月6日、原爆の閃光下に置かれた。
 彼女はその朝、丸山らとともに広島市堀川町の宿舎にいて、爆風で庭に吹き飛ばされて一時失神した。気がついてから、やはり庭に吹き飛ばされていた座員の高山象三とともに、燃える町から広島東方の比治山へ逃げたが、8日、宝塚時代からの彼女の後援者であった神戸六甲山麓の中井家にたどりついた。
 そのときは園井は、まだふしぎに無傷に見えたが、次第に発熱と身体の痛みを訴えるようになった。

 「19日の園井の体温は39度。体の節々の痛みを訴えました。翌20日朝の体温は39度8分。胸部の苦しさを訴え、左腕に紫色の小豆大の腫瘍が出来、脇や腰に皮下出血があって、そこをしきりに痒がり、脱毛が始まりました。夜になると額に脂汗をにじませて息遣いもあらく胸の苦しさを訴え、時々幻覚が起り、その夜下血して、内臓が破壊していることを示しました。皮下出血の紫色の点々がどんどん増えてゆき、左腕の小豆大の腫瘍は葡萄大にふくれて壊疽(えそ)状を呈し、湯を訴え、全身を痒がって、掻いてもおさまらず狂いだしそうで、体温は40度を越えました。
 その時、隣室では、象三の通夜がひそかに行われていましたが、その間、園井の苦しみはつのるばかりで、ふと幻覚におそわれて声をあげたりし、それもすでに言語中枢がおかされているのか言葉にはならず、全身を痒がって訴え、左腕の壊疽は杏大となって黒紫色の光を帯び、皮下出血が全身に拡がっていました。
 21日。(中略)
 園井の左腕の杏大の腫瘍は桃の実ほどにふくれて熟れきっていたのを、薄田のママが注射針の先でちょっと突いただけでぷすと音をたててくずれ、黒紫色の血膿がとくとくとほとばしり出ました。園井はすでに意識は混濁していて、視点のない瞳を空しく動かしながら何か言いたげに笑いました。
 薄田のママがそれにあいづちを打つように、
『ええ、ええ、すぐらくになりますよ、早くよくなってねえ』
 などとはげまし、やさしく手を撫でてやる。やがて呼吸がせまってきて、悶絶の形で園井の息が絶えました」(江津萩枝『桜隊全滅』)

「人間臨終図鑑」(山田風太郎徳間書店

http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Miyuki/1407/topic/sonoi.html



彼女の誕生日は8月6日 原爆が広島に落ちた日