正直

生命を

あまりに軽々しく 自然が奪っていった

奪うという観念もなく

それでも 人間は奪われた


地球にとって命は重くない

人間も鳥も魚も虫も 同じように軽く

いとも簡単に地球に生命なんてものは無視されることが証明された


そこが戦場だろうが

放射能の汚染区域だろうが

人々の生活圏だろうが

小鳥たちが歌う原生林だろうが

地球には何の意味もない




あたしはまだ被災地の現場を見ていないが

そこに立てば

「命の重さ」よりも 人間があまりに小さな存在だったという

「命は大切だ」という言葉ほど意味がないということ


それを思い知るのだろう


自然との共存だの

エコロジーなど人間のエゴだってことを思い知るんだろう






ここが人間に正気に返る 正念場なのだと思う





人が家族を失うということ


もしも子どもの命をひきかえにするなら

自分の生命はとっくの昔に捨てている  どころか

千人 万人の人の生命や財産をひきかえにしろと悪魔と契約を結ぶ自分を想像する

それが人間 人の親であり 愛に生きるという心を持った人間


地球とは切り離した 共存などという偽善に打ちのめされてもなお

人と人の愛憎に生きて死ぬしかない「生命」


その想いを背負った一人一人がいま そこにいる


義援金を街のスーパーの箱に入れる人々
ホームセンターの蛍光灯は半分になった
紙おむつじゃなくて布オムツでやってみようという若いママ


そこにあるのは 人の心


絶望の底から這い上がれと 全く知らない赤の他人の痛みを
同種の人間が感じている 

人が人でしかない その上で





そして  

この正念場に

自分の正直なところがむき出しになって鏡にうつっている


自分の本性と向かい合う機会なのだと思う


あたしはあたし