この惑星に雨が降ることさえ奇跡


何回忌だろうが
そういう数え方がどうこうじゃなくて


ただただ淋しい


あのこの産毛とか ほっぺをこの手が覚えてて

あのこがいたという奇跡はあたしの中に生きて
それは

地球に雨が降るように
蝶々が飛ぶように

サバンナにチーターが走るように


キリマンジャロやエレベストがそびえるように

山奥で誰も見ないのに
咲いては散る秋萩のように

ただ流れる大河のように

自然は無表情なように
まるで何もなかったかのように
生まれて消えてしまった あたしの赤ちゃんが何故いないのかは一生理解できない


何回忌でどうこうコメントをしてきた誰かの何をどう考えたらいいのかわからないけど


一度だけ太陽の夢をみました


あたしは太陽におっぱいをあげてて幸せで幸せで

「目がさめて太陽がいなかったらどうしたらいいの?どうしたらいいの!」と夫に聞く夢


目がさめたら太陽はいないと夢の中でわかってた


あたしは生きる者
あのこは死者なのだ


太陽があたしの腕の中で その線を超えていったあの瞬間
心は引き裂かれたままだ

あれから何年たったかなど 数えたことはない


ただ淋しい


花を飾ってオモチャを並べてお菓子を並べてお線香をたいて

つい今年も
戻ってきてね と手を合わせてしまう


窓の外に止まった小鳥があの子じゃないかと思ったりする